みなさんは「アロマ」というとどんなイメージを持ちますか?
柑橘系のフレッシュな香りを嗅いだ瞬間、「いい香り~」と
顔の表情がパッと明るくなって、笑顔になったりしたことはありませんか?
しかし、良い香りを部屋に漂わせるもの。
リラックスするというイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
「日本国内ではまだまだ、その程度のイメージを持つ人が多い」
と言うのは、実際に精油を治療に用いている医師たちです。
芳香植物から抽出された100%天然の精油を用いた療法を「Aromatherapy」といいます。
「Aromatherapy」
英語読みすると「アロマセラピー」
フランス語読みをすると「アロマテラピー」と読まれます。
日本では、そのどちらもの言葉が使われていますね。
みなさんは、なんと呼んでいますか?
今回は、香り成分が活き活き、きれいを支える理由についてご紹介します。
アロマテラピーの可能性
アロマテラピーには、香りによる心身の癒やしやリラクセーション効果、
肌や毛髪のみずみずしさを保つといった美容効果があります。
また、医学的効果を目的とした「メディカルアロマテラピー」では、
実際に身体の不調に対して効果を発揮しています。
アロマテラピーの美容効果
・リラックスすることで美肌、アンチエイジングなど
・精油の効果で肌や髪のコンディションが良くなる
・心が潤されることで余裕が生まれ体全体の美につながる
・スキンケアで肌の調子が良くなる
メディカルアロマセラピーの効果
・交感神経の興奮を抑えることでよく眠れない・胃腸の不調、不安等に期待できる
・血行促進効果によって肩こり・筋肉痛・頭痛などの緩和に良い
・気管支の症状を緩和することでかぜ・インフルエンザなど予防や改善に使う
・筋肉をほぐして体液循環を良くするマッサージにより顔や体のむくみ等に効果的
女性にとって嬉しい効果が期待できそうですね。
アロマテラピーの歴史
アロマテラピーを世に送り出したのは、フランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォセです。
ガットフォセは化粧品の研究に携わり、ラベンダーの防腐効果に興味を持っていました。
あるとき実験中にやけどをしたガットフォセがその部位にラベンダーを塗ったところ、
傷は化膿もせず治癒してしまいました。
この経験から彼はラベンダーをはじめとする精油の研究に本格的に取り組むようになりました。1930年、ガットフォセの自著「アロマテラピー」が刊行されました。
後に同じフランス人の医師ジャン・パルネによって受け継がれます。
彼は精油に関する膨大な臨床データを積み上げて1960年代にはアロマテラピーの基礎を
確立しました。
それからアロマテラピーはヨーロッパ各国へ広まり、様々な形を取りながら発展し
ています。
フランスでは徹底した「メディカルアロマテラピー」として発展し、
病院や専門のクリニックには精油の薬理作用や処方に精通した医師がいます。
そのため、フランスでは精油は医薬品と同様に扱われ、
成分表示などについて細かな規定があります。
アロマテラピー各国の対応
日本で本格的なアロマテラピーが紹介されたのは1985年、
イギリスのロバート・ティスランドの著書
「アロマセラピー・芳香療法の理論と実際」の翻訳書によります。
そのため日本でもイギリス式のアロマセラピーとして、
エステの美容効果やリラクセーション効果を中心としたアロマテラピーが展開しました。
日本では若い女性を中心に一種のアロマブームが起こります。
すると市場には化学物質や農薬が混入した粗悪な精油が出回るようになり、
皮膚炎などを発症する健康被害も報告されるようになりました。
こうした事態を憂慮した医師の川端一永氏は、正しい精油の選び方、使い方について
精査検証する研究会を立ち上げます。
のちに医師や看護師、助産師、薬剤師など国家資格を有する医療従事者によって、
1997年「日本アロマセラピー学会」を発足させました。
香り成分が健康と美容に期待できる理由
アロマテラピーはヨーロッパ各国で補完医療として用いられ、
使用される精油は薬品同様に保険医療の適用を受けています。
精油をどのように使用するかによって効果や理由は違います。
ここではアロマテラピーの精油が伝わる3つの使用ルートと
効果が期待できる理由を説明していきます。
トリートメント(マッサージ)と塗布
皮膚は表皮・真皮・皮下組織からなります。
表皮には細菌やウイルス、異物などの侵入を防ぐバリア機能があり、
ほとんどの物質は表皮でシャットアウトされ皮膚内部に入り込むことができません。
ところが、精油成分の分子サイズはたいへんに小さく、精油の芳香分子は表皮の
「毛孔(もうこう)」「汗孔(かんこう)」などから真皮、皮下組織へと浸透し、
最終的に血液中に取り込まれて血液の流れに乗り体内に吸収されて薬理効果を発揮します。
また、精油を用いるアロママッサージは心身の疲労や緊張を取り去る働きがあり、
高いリラクセーション効果を発揮します。
さらに血液循環を促進し、筋肉の痛みやこりの原因となる乳酸などの疲労物質や
老廃物を体外に排出する効果もあり、さまざまな不快症状の解消に役立ちます。
精油の芳香成分は揮発性が高く、ビンから出たらすぐに蒸発しはじめます。
空気中に拡散した芳香分子は呼吸によって鼻粘膜、肺へ送り込まれます。
鼻粘膜から脳へのルート
鼻の穴から吸い込まれた芳香分子は、鼻腔の内側奥にある嗅上皮に到達します。
嗅上皮には香りを認識する嗅神経細胞が存在し、その表面からは香りと結合する
レセプター(受容体)を先端に持つ嗅線毛が出ています。
芳香分子は嗅線毛のレセプターに結合し、これが刺激となって嗅線毛の内部では
次々に反応が起こり、芳香分子はインパルスと呼ばれる電気的な信号になります。
この信号は嗅神経細胞から脳につながる軸索を伝って脳の嗅球(きゅうきゅう)に送信され、
脳の大脳辺縁系を経て視床下部に到着します。
視床下部に到着した信号は視床下部を刺激し、働きの落ちている
恒常性維持調節機構を回復します。
甘酸っぱい柑橘系の香りをかぐとリラックスできたり、
刺激的なペパーミントの香りをかぐとシャキッとしたりするのは、
香りが信号に変換されて脳に伝達されるからです。
肺から血液へのルート
呼吸器を介するもう一つのルートは、芳香分子が軌道を経て肺胞に取り込まれ、
ここから血流に入っていくというものです。
精油を吸入すると、約5分後には血中に精油の成分が出現することがわかっています。
肺から取り込まれた精油は代謝されるのも早く、成分によって違いはありますが、
わずか7~8分で体外に排せつされてしまいます。
吸入や芳香浴のメリットは、精油の成分を速やかに体内に取り込める点、
好きな香りをかぐことでリラックスできる点です。
手軽でありながら、心身両面にアロマテラピーの効果は表れます。
精油を選択する際に注意すること
精油は、日本では香料や雑貨の類として扱われるため、品櫃基準はないに等しい状態です。
厳しい品質基準をクリアしたものと、そうでないものとが同じように店舗で扱われているのが現状です。
療法としてアロマテラピーに使える良質な精油は、国内の市場に出回っている
全製品のわずか5%にすぎないともいわれています。
粗悪な精油を使うと、化学物質や農薬が体内に吸収されてしまいます。
アロマテラピーによる皮膚障害のトラブルは年々増加傾向にあり、
国民生活センターにも精油が原因と思われる接触性皮膚炎などの被害が増え続けています。
アロマテラピーを安全かつ効果的に行うためには、良質な精油を選ぶ目を養うことが重要です。
身体に塗ったり吸い込んだりして取り入れるものなので、精油の品質はとても気になります。
【参考書籍】
「医師がすすめる『アロマセラピー』決定版」
(川端一水・吉井友季子・横山信子 マキノ出版)
「医師が認めたアロマセラピーの効力」
(川端一水 河出書房)
心や体に働きかける理由
アロマテラピーは精神面にも効果を発揮します。
身体に不調があり、不快感を覚えるのに検査をしても異常がない、
というようなケースには、自律神経のアンバランスが疑われます。
自律神経は体の働きを無意識に調整している神経で、交感神経と副交感神経からなります。
交感神経は心拍数を増やし、血管を収縮させて血圧を上げ、活動に適した体調を作る自律神経で、主に活動時に優位になります。
一方、副交感神経は心身をリラックスさせる自律神経で、食事時や休息時に優位になり、
心拍数を少なくし、血管を拡張して血流を良くして食物の消化を促します。
交感神経と副交感神経がバランスを取って働き、
一方が優位のときはもう一方の働きは抑えられます。
自律神経の働きを支配しているのは、脳の視床下部です。
視床下部はストレスの影響を受けやすく、心配事や過労などのストレスがかかると、
その刺激が影響して自律神経のコントロールもうまくできなくなります。
交感神経が優位になってしまい「食欲がない」「眠れない」「イライラする」
「下痢や便秘が続く」「頭痛」などの症状が現れます。
日によっては、しんどい時ってありますよね。
とくに女性の場合は、ホルモンバランスの影響も考えられそうです。
精油の香り分子は脳にダイレクトに働きかることが、大事なポイント!
精油に含まれる成分には、
交感神経の興奮を抑えて副交感神経を優位にさせて調整する作用や、
気分をリフレッシュさせる作用を持つものが多数あります。
上手に活用して健康と美容に役立てていきましょう!
まとめ
今回は、アロマテラピーのイメージから一歩踏み込んでみました。
まだまだ良い香りを部屋に漂わせるもの、リラックスするというイメージが、
多いのが現実ですが精油を効果的に用いていて健康や美容に役立ちそうなことがわかります。
次回からは、具体的な使用方法やセルフケア。
自分でつくれるアロマアイテムをご紹介します。
実際にアロマテラピーを使ってみて、自分で健康と美容を守っていきましょう!
今日の笑顔をつくるセルフケアになりますよ。
以上、参考になれば嬉しいです。